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蝸牛の庵

好きなこと、好きなだけ

犬のこと

 


犬ってすごい。よく鼻が利く。走るのも得意だ。どこまで散歩に行っても帰り道をちゃんと覚えていて、ひとを家まで連れて帰ってくれる。自分の名前は忘れない。
穴を掘るのも私よりずっとじょうずで、はやい。

 

犬はたくさんのことを知っている。


寒い日はおさがりの毛布があたたかくて、暑い日は立ち並ぶ植木の隙間が涼しい。
家の外にいる人は少しこわいけれど、玄関から入ってくる人はお客様だ。尻尾を振ってお迎えするのだ。
雷と風は危険だと思う。そういう日はどこかに隠れているか、走り出してしまうのがいい。
ご飯を食べるのが遅くて、いつも鳥に奪われる。でも気にしない。自分にはまたごはんをくれるひとがいるのだと理解している。
牛乳はおいしいけれど、飲んだあとは口の周りを丁寧に舐めてきれいにしないといけない。
おねだりはおすわりをして、前足で地面を掻いてみる。それでだめなら、ひとの足元に触れてみる。

 

歳をとって昔みたいに走れないなら、ひとの近くにいるほうがいい。無理はしないほうがいい。
階段を上って勉強机の下に収まっていればあたまを撫でてもらえる。階段の最後の3段は駆け下りても大丈夫だ。

 

身体が思うように動かないなら、大きな声で吠えてみる。倒れてしまったら助けを呼ぶ。そうしたら、かならず誰かが来てくれる。
人の手が口元に運んでくれるものは、きっと食べたほうがいいものだ。
気に入らないことがあったら文句のように鼻先を鳴らしてみせる。傲慢にしていても愛される。
音もにおいも光も、よくわからなくても、だれかがそこにいるのかいないのかは分かる。
息をするのをやめるときも、だれかがいるときのほうがいい。さいごは土に還るから、お世話になったひとに迷惑はかけない。

 

 

犬ってすごい。
人間とともだちで、きょうだいで、家族になれる。

 

 

わたしは犬がすごいことを知っている。くやしいけれど、あの茶色くて四足歩行で毛深くて計算のできないいきものが、17年かけて教えてくれたのだ。きっと忘れないやりかたで。

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