蝸牛の庵

好きなこと、好きなだけ

取り急ぎメモランダム

 

プロレスの試合を見に行っていた。

 

右隣の席は筋金入りのプロレスマニアの知人男性Kで、試合鑑賞に熱中していた。

私はKくんのことが好きだった。白熱しているらしいプロレスの試合をやや退屈に思いながら、でも彼が楽しそうに過ごしていることがとても嬉しかった。

 

左隣は中年の頭の薄いさえない男性で、静かにリングを見据えていた。

 

試合終了後、Kくんは私に向き直って言った。

「ところでプロレス好きだったの?どうしてここに来たの?」

 

私は言葉に詰まった。私がここに来た目的はただ彼の気を引きたいとかあわよくばまた誘ってほしいとか、そういういわば男目当ての下心を満たすためであって、プロレスには全くと言っていいほど興味が無いのだ。

 

だが、言葉を詰まらせているのは私だけではなかった。

私の左隣、空を見つめていたさえない中年男性もまた、なぜかKくんの問いに目をぎょろつかせて反応を示した。

 

「なんでって言われても…ねえ」

 

しどろもどろに答えながら私の方を見るので、私は内心誰だよこのおっさんと思いながらも同意した。実際、大きな声で言えるような動機は持っていないのだ。

 

私たちの黙秘にKくんは納得しなかった。何度か同じ内容の問いを繰り返した。

そのうちに語気が強まっていったので、私は決心して口を開くことを選択した。これ以上彼の機嫌を損ねるわけにはいかない。

 

「私は、Kくんがどんなものに興味持ってるのか知りたくて来ました。プロレスのことは全然知りません」

 

それを聞いたKくんは怒るでもなく、笑うでもなく、ただ「あ、そう」とだけ言った。

 

その様子を見ていた左の中年男性も、観念したように話し始めた。

 

「僕はね、もう今月いっぱいで定年なんだ。何も残せない、本当につまらない人生だった。

だからそんな自分を変えたくて、新しいことを始めようと思ったんだ。なんでもいい、死ぬ前になにか僕という存在の爪痕を残せるようなことを。

それで格闘家になろうと決めた。でも瞬発力では若い子に勝てやしないからボクシングは駄目だし、空手は先生がいないし、剣道はお金がかかる。柔道は昔向いていなくて諦めた。

だからあえて今まで全然知らなかったプロレスを選んだんだ。恥ずかしいんだけど…プロレスでいつかチャンピオンになってやる、と思った。今からじゃ遅いのかな、笑われちゃうかな、って怖くて言いにくかったんだけど。

まずはプロレスに興味を持つところから始めたくて、今日の試合のチケットを取ったんだ。

でもやっぱり、今までの人生で一度も興味が湧かなかっただけあって、つまらなかったね」

 

Kくんは黙って眉間にしわを寄せて席を立った。私も追随して、中年男性に背を向けて立ち去った。

 

 

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っていう、珍しくすげー鮮明な夢を明け方に見たんですけど、なんかこのまま忘れてしまうのもったいない気がするんで覚えてるうちにメモします。

ちなみにKくんは実在しますがプロレスマニアでも私の想い人でもありません。なんなら暫く会ってません。残念!

 

あとおっさん誰だよ。今からレスラー目指すんかよ無理だよ。しかも結局興味無いんかよ。

でも結果的に「何このおっさん」っていう意見で私とKくんの思いが一致したので案外恋のキューピッド的なやつだったのかもしれない。

 

なにか意味のある夢だったのでしょうか。夢占い詳しいマンがいたら教えてください。あんまり信じてへんけど。