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蝸牛の庵

好きなこと、好きなだけ

『春と盆暗』

 

ネタバレはできるだけ避けますがどうしても本編の内容には触れてしまうので、まっさらな状態で本作を読みたいという方はそっとブラウザバックをば。

毎回言ってる気がするんですけど、全然、この魅力を言語化できる自信がないんですけど、でも、めちゃくちゃ好きなので書くね。

 


春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)
熊倉献
https://www.amazon.co.jp/dp/B01N1050ZV/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 


と勇んでレビューに臨んだのだが、こちら↑の商品ページについたレビューがあまりに素晴らしく、何も言えなくなってしまった。


気合を入れ直そう。


わたしたち人間は、それぞれにどこか歪なところがある。網膜が捉える情報とは違う、型にはまらない風景を持っている。もしくは、そう自分で思い込んでいる。

 

私のような10代の時期はきっと特にその傾向が強くて、『中二病』なんて名称がある程だ。
かくいう私もずいぶんこじらせている方だという自負がある。
宇宙の大いなるものとの意思疎通を許されたただひとりの人類だったみんなー?封印された呪われし左手を継承していたことのあるみんなー?元気にしてるー?

 

粒の揃わない自分だけの感情や空想の世界。きっといつか、心の戸棚にしまい込んで鍵をかけてしまうだろう。それが大人になる通過儀礼であるかのようにみなされている。

 

でも願わくばその『心のなかの歪んだ世界』を、暗がりに放り込む前にだれかに肯定されたい、自分で肯定してあげたい。煩わしい過去たちのようで、どこか愛しさもある。そんな気持ちがあるのは私だけではないと思う。


そんなささやかな願いを、この作品に叶えてもらった気がするのだ。


大筋のストーリーはありふれたボーイミーツガール、だがその登場人物たちはどこか歪である。
道路標識を月面に投げてみたり、街が突然水中に沈んだり、目の前のできごとが宇宙を支える法則だったり、景色がみるみる朽ちていったり。もちろん頭の中でのことだが。

そんな、不思議と愛しい心の世界を受け入れてくれる場所を、それぞれがみつけてゆく。

 

やわらかい線で描かれたさわやかな物語ではあるが、何気ないところに伏線が敷かれていてドキッとさせられる。


ストーリーにはI LOVE YOUも親愛のキスも出てこない。けれどそこにあるのは間違いなく、恋で、愛だ。たとえヒロインが眼窩に月のはまった『エイリアン』だとしても。

 


いい漫画に出会ったな、と思う反面、連作が四話で終わってしまったことが残念である。
作者の熊倉献氏について調べてみたがこれ以外の発表作はないようだった。どうかまたどこかで幸せな物語を紡いでくれますよう。

 


試し読みのリンクはこちら。私のお気に入りの『月面と眼窩』が丸ごと読めます。是非に。
http://www.moae.jp/comic/harutobonkura/1?_ga=1.93756571.721826178.1464851020